大地震のその前に…普段からできる保育園の防災対策&チェックリスト
いつどこで大地震が起きてもおかしくない、地震大国・日本。
先日、2021年2月13日も茨城県が被災の中心となった、マグニチュード7.3の地震が発生しました。
日中の保育時間ではなかったことが不幸中の幸いでしたが、それでも
「すぐ浮かんだのは子どもたちのこと。無事でいてほしいと、真っ先に頭をよぎった」
「もし保育中だったら・・・守れるのは保育士だけ。冷静な判断ができるようにしないと」
などと、多くの保育士さんが危機意識を新たにした、今回の地震だったようです。
その後、さらに2021年3月20日にも、宮城県を震源地としたマグニチュード6.9の地震が発生しました。この時は土曜日であったため、平日に比べて園児が少ないとはいえ、発生時刻が18時過ぎだったこともあり、お迎えに影響の出た保育園もあったのではないでしょうか。
日本は、国民の防災意識は高く、建物の耐震性はもちろん、生活用品の備蓄や避難経路の確保など、いざというときのための備えをしている人がほとんどです。その中でも子どもや高齢者や病人を預かる、『保育施設』『介護施設』『病院』などは、特別な配慮が必要です。
そこで今回は、保育園で起こりうる被害をあらためて確認し、安全対策のチェックを行ってみていきたいと思います。
施設で備えておくべき防災対策、子どもたちへの防災教育のあり方についてもご紹介していきます。ぜひ災害に強い、安全な園づくりに役立ててください。
また、コロナ禍の防災用品についてもご紹介していますので、しっかりとチェックしてみてください。
地震発生!! 園内ではいったい何が?
強い揺れが園内にもたらす被害はさまざま。
どんなことが想定されるのか、場所ごとにみていきましょう。
保育室
・本棚の転倒や移動、収納していた物の散乱
・オルガンやピアノの転倒、移動
・テレビの落下
・窓ガラスの飛散
・照明器具の落下・飛散
・時計、スピーカーなど壁掛けの機器の落下
・扉がはずれる、倒れる
廊下
・下駄箱の転倒、移動
・照明器具の落下・飛散
・窓ガラスの飛散
・消火器の落下、転倒
体育館、多目的ホール
・ピアノの移動
・大型照明器具の落下・飛散
・出入り口の扉がはずれ、倒れる
給湯室
・食器棚の転倒、移動
・食器類の落下、散乱
屋外施設、園庭
・固定遊具の倒壊、崩落
・ブロック塀の崩壊
・看板などの落下
・エアコン室外機の落下、転倒
・倉庫の倒壊、崩落
耐震防災チェック!○? それとも×?
それでは次に、現状のチェックを行ってみましょう。
○であれば合格、×の項目は、見直しが必要です。
(1) 園舎や体育館などの耐震診断を受けてOKが出た。
(2) 園庭のブロック塀や遊具の基礎、倉庫の強度を確認している。
(3) ピアノ、本棚などの大きな家具は固定や転倒防止対策をしてある。
(4) ガラス窓には飛散防止シートを貼っている、または強化ガラスにしている。
(5) 照明器具を固定し、飛散防止対策をしている。
(6) ピアノやテレビなどの備品は高いところ、不安定なところ、出入り口付近には置いていない。
(7) 防災マニュアルがあり、定期的に見直しをしている。
(8) 緊急時用の連絡網がある。
(9) いざというときのための生活用品をそなえている。
(10) 職員と園児の避難訓練は定期的に行っている。
(11) 保護者の引き取り訓練を行っている。
(12) 地震に関係した絵本やビデオで防災教育をしている。
保育園でできる防災対策は
事前にしておくべき防災対策をご紹介します。
災害対策について考える際は、自分たちの地域や保育園にマッチした方法を考えましょう。
防災マニュアルを作成する
自然災害や火災などの非常事態への備えとして、『防災マニュアル』を用意しておくことはとても大切です。
防災マニュアルや防災ハンドブックなどは、多くの自治体や民間からも発行されています。そういった一般的な防災マニュアルに加えて、自身の保育園に合った防災マニュアルも作成しましょう。
防災マニュアルを作成する際には、既存のテンプレートに情報を付け足していくとスムーズに作成できます。例えば、経済産業省から発行されている「想定外から子どもを守る 保育施設のための防災ハンドブック」は保育施設のための情報なので、これに情報を付け加えることからはじめましょう。情報を付け加える際は、大人の目線だけでなく、子供の目線にも立ってみて、情報を付け加えることを忘れないようにします。
自身の園にマッチした防災マニュアルで「もしも」に備えましょう。
また、エプロンのポケットに入る小さなサイズで作成しておくことも必要です。
被災時の役割分担を考えておく
いざという時に落ち着いて対応するためには、「安全確保は誰が行うのか」「子供たちを誘導するのは誰か」「災害時の意思決定は誰が判断するか」などの役割分担を、事前に決めておくことが大切です。
役割を決めるだけでなく、実際にどのような動きをするのかシミュレーションし、問題点や効率できないかを確認しておきましょう。
もちろん万一の時には役割を超えた動きを臨機応変に行わないといけませんが、誰が責任を持って行うかを決めておくと、スムーズな対応が可能になります。
連絡網をしっかりと確認しておく
災害時は、職員間、地域の関係機関、そして保護者と速やかに正確に連絡をとる必要があります。
また、ライフラインの断絶に備えた連絡網も確保しておくことが大切です。
特に災害時は、保護者は我が子が心配でたまりません。姿を確認するまで不安で仕方ないのです。少しでも不安を取り除くためには、迅速な連絡をする必要があり、子供の引き渡し時にもとても大切なやりとりとなります。電話連絡だけでなく、SNSなどを積極的に活用する、他にも災害用伝言ダイヤル(171)などを使えるようにしておくなど、複数の連絡手段を決めておくと良いでしょう。
また、子供を引き渡す場所やそのルールなどを予め決めておき、保護者と共有しておきましょう。
事前にその連絡網が使えるかのテストや、変更があればすぐに更新する必要があります。
ハザードマップ・避難経路の確認
ハザードマップは、地域・周辺の防災に関する情報をまとめた地図のことです。
地方自治体でハザードマップを作成しており、ホームページ上で公開されていたり、地域で配布されていたりします。
保育園の位置と、ハザードマップを照らし合わせて、有事にどんな災害が起きるかを確認したり、避難場所までの経路を確認したり、実際に歩いてみるとどれくらい時間がかかるのかなどを確認しましょう。また、想定した避難経路が使えないこともありますので、避難場所の経路は1つだけでなく複数確認しておきましょう。
普段何気なく通っている慣れた道でも、見直すと危険があるかもしれません。加えて、季節によってマップの変化も考えられますので、随時確認しておきましょう。
地域との連携
必要に応じて地域の自治会や近隣の保育園・幼稚園との連携についても確認しておきましょう。災害の際は、人と人との助け合いがとても大切になります。普段からの交流も欠かさないようにしましょう。
これだけは用意したい備品とは
災害が起きたとき、すぐに持ち出せるよう、非常用備品の場所はスタッフ全員が把握しておきたいものです。
災害時は、消防や自衛隊の援助が来るまで時間がかかる場合もあります。持ち出しできる数はある程度限度がありますが、ある程度(3日~1週間)過ごせるくらいの貯蓄があるとベターです。
備品リスト
【必須備品】
●児童名簿(緊急連絡先が記載されているもの)
●防災マニュアル(行政の連絡先が載っているもの)
●ハザードマップ
●筆記用具
●懐中電灯
●救急用品、薬
●乾電池・充電器
●ホイッスル(避難誘導用)
●ラジオ(情報収集用)
●拡声器
●旗など目印になるもの
●ガムテープ
特に、児童名簿は保護者と連絡する上で必要なものです。情報の取り扱いに注意しながらも、必ず持ち出すようにしましょう。
【保育に必要なもの】
●おんぶ・抱っこ紐
●ヘルメット・防災頭巾
●避難車(ベビーカー)
●軍手
●ブルーシート
●非常食(3日分程度)
●飲料水(トイレ用も含み、3日分程度)
●毛布・ブランケット
●紙おむつ
●粉ミルク
●離乳食
●哺乳びん
●マッチ、ライター
●ビニールシート
●園児、教職員用の着替え
●ティッシュ
●ウェットティッシュ(お尻ふき)
●タオル類
●おやつ
●食品(すぐに食べられるもの)
非常食はアレルギー対応が可能なものを用意しておきましょう。
【あると便利なもの】
●カセットコンロ(ガスボンベ)
●なべ・やかん
●紙皿・紙コップ
●はし/スプーン/フォーク
●ポリタンク/バケツ
●工具
●簡易ストーブ
●石油
●ビニール手袋/ゴム手袋
【感染症対策用品】
●マスク
●消毒液
●体温計
●除菌シート
●室内履き(スリッパなど)
コロナ禍という状況の中で、災害が起こる可能性も十分に起こりえます。
身の回りを清潔に保つこと、周りから感染しないこと、感染させないことは避難生活にとても大切です。
感染防止や健康状態の確認に役立つものはできるだけ持ち出せる状態にしておきましょう。
災害はいつ発生するか分からないもの。いつでもすぐに簡単に持ち出せるようにリュックなどにまとめておき、食品、水、薬など使用期限がある物などは定期的にチェックして入れ替えるようにしましょう。
防災教育の大切さ
保護者のいない場で災害が起きたとき、子どもたち一人ひとりを守るだけの保護が万一行き届かなかった場合に、大切になってくるのは子どもたちが「自分自身を守る力」。
それは、まず何が起きたのか理解し、過度に動揺しないための「知識」、そして目の前の危機から自分の命を守れる「判断力」、この2点です。
幼い子どもたちに、災害時の適切な行動力を身につけさせるのは難しいと思われがちですが、日常の保育時間に、楽しみながら学べる絵本やビデオ、体験プログラムなどを活用すれば効果的にアプローチすることが可能です。
また、防災教育は防災訓練の時のみ行うものではありません。日頃から防災への意識をもってもらうようにしましょう。ここでは、災害時の危険や身を守る方法を体験できるプログラムや、防災のイメージを伝える絵本、ビデオなどをご紹介します。
防災教育プログラム
卵の殻を使ってガラス飛散を体験
災害につきもののガラスや割れ物の飛散。あわてるあまり、靴やうわばきをはかないまま、足元に注意を払わず動くと危険です。そこで、シートの上に卵の殻をばらまき、園児にはだしで歩かせて、その痛みを体験させます。
「地震・災害のときは、はだしではケガをする」と身をもって理解できるプログラムです。
地震がきたらだんごむしポーズ体験
揺れを感じたら、まず守るべきなのは頭であること、そのためには机の下に潜る、もしくは鞄やクッション、ぬいぐるみなどで頭を守ることを教えます。そのうえで、もし身近に何も無かったときのために、だんごむしのように体を丸めて、手で頭を抱える「だんごむしポーズ」を体験させます。「だんごむし!」と言ったら反射的にこのポーズをとれるよう、ふだんから保育や遊びにも取り入れてみましょう。
紙芝居・絵本・ビデオ
『紙芝居「あわてない あわてない (いのちを守る防災かみしばい じしん・つなみ・たいふう)」(童心社)』
保育園でのお昼寝の時間。みんなのいびきに混じって、「ゴゴゴゴーッ」という音。地震です! みんなは大騒ぎ。
そんなとき先生の「あわてない、あわてない」の一言が・・・。揺れがきたらまず何をすればいいか、とっさの正しい対応を、明るく温かい絵柄でやさしく教えてくれます。子どもにもわかりやすい内容で、絵が変わるたびにぐんぐん引き込まれていく紙芝居です。
http://www.doshinsha.co.jp/search/info.php?isbn=9784494079803
『絵本「あっ! じしん」(学習研究社)』
子どもたちが、地震のときのさまざまなシーンをイメージし、命を守るための方法を考えることができる本。
地震が起こるしくみから、防災の大切さまで、しっかりと子どもの心に残る内容で、大人も楽しみながら一緒に学べます。「防災の手引書」つき。
http://hon.gakken.jp/book/1020230800
『ビデオ「ぐらっとゆれたら・・・どうするの?」(学習研究社)』
幼児向け安全教育ビデオ5巻シリーズの、第1巻。地震のときにとるべき行動を、くまのオロロくんと園児が一緒に考え、答えを導き出せる内容になっています。歌とダンスも収録されていて、最後まで飽きずにくりかえし楽しめます。
http://www.hihirecords.com/moshimo/
天災は予測することができません。
だからこそ、いつ起こっても良いように、普段からの備えがとても重要になってきます。とくに子どもたちを預かる保育園では、まず何よりも、子どもたちの命を守るために、スタッフが迷わず一丸となって動かなくてはなりません。
耐震補強や備品の固定、生活用品の備蓄のようなハード面から、連絡体制、避難ルートの整備、防災教育などのソフト面まで、平常時からしっかりと定期的に見直していくことが、災害に強い安全な園を実現するための必須条件といえるでしょう。
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