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急な「帰りたい」を優しく受け止める、10の方法

最終更新日:2021.04.22

デイサービスやショートステイ、老人ホームなどでよく経験する認知症の方の言動に、「帰宅願望」があります。
読んで字のごとく、「家に帰りたい」と訴えるのですが、それに対して「自宅はここですよ」「家に帰っても誰もいませんよ」などと却下すると、帰りたい気持ちをますますあおりかねません。
帰宅願望には必ず理由があります。そこを理解し適切な対応をすることで、相手の気をそらしたり、「じゃあここにいようか」と思わせることは可能なのです。
今回は、この帰宅願望について、原因とその現れ方、防ぐための対策、そして実際の対処法などをみていきたいと思います。

帰宅願望の症状と原因

認知症のある高齢者で、自宅とは別の場所に行くと「帰りたい」と訴える人がいます。中には、自宅にいても「家に帰る」と言い出し、外に出ようとすることもあります。
日中いつでもきっかけさえあれば現れる症状ですが、とくに夕方になると「夕飯の支度をしなくては」「帰らないと親に叱られる」といった不安が募り、帰ろうとすることが多いようです。周囲の目を盗んで外に出て家を探し、そのまま徘徊につながるケースも。
慣れない場所にいると、ちょっとしたことが自宅への逃避につながります。「トイレにいきたい」「おなかがすいた」「眠い」など、慣れ親しんだ自宅でなら安心して対処できるからです。また、たとえ自分の家であっても、見知らぬ人がいたり、部屋の模様替えをしたりして雰囲気が変わると、「ここは家ではない」と感じることもあります。失禁などで怒られたときに、帰宅願望が強くなる場合もみられます。

帰宅願望を防ぐには

急な環境の変化を避けることが大切です。介護施設に入所したり、引っ越しをするなど住む場所が変わるときは、なるべくもとの部屋の雰囲気に近くなるよう、見慣れた家具や飾り物などを同じように配置し、高齢者の居心地のいい場所を作っておきます。
そして、「ここにいてくれると助かる」「あなたがいると嬉しい」ということをしばしば伝えましょう。施設でも自宅でも、一人で部屋に残したまま放っておくような状態を避け、できるだけ声をかけるようにします。
失敗を咎められたときに「帰りたい」となることも多いので、優しく説明したり、頼んだりといった接し方をするといいでしょう。

効果的な帰宅願望への10の対処法

それでは、帰宅願望のある入所者に、一人でもできる対応の仕方をみていきましょう。
効果は一時的なものですが、何度も繰り返していくうちに、「このスタッフがいると安心する」と感じてもらえるようになればしめたもの。その信頼感が、帰宅願望そのものを軽減することもあり得ます。

(1) タイミングを見て用事を頼む

「夕暮れ症候群」とも呼ばれる帰宅願望。夕方になると、暗くなる前に帰宅しなければという気持ちから起こりやすくなります。ですからこのタイミングで何か頼みごとをすると、気持ちをそらすのに効果的。洗濯物をたたんだり、印刷物を折ったり、何かの作業に集中するうちに夕食の時間になり、日暮れの時間帯をやり過ごすことができます。

(2) 外に出てみる

日中何もすることがなく、ただ漫然と居室やリビングで座っている高齢者は、「ここにいるのは虚しい」という気持ちに襲われ、その場を離れようとします。このような帰宅願望に対しては、抑えるのではなく、逆に外に連れ出すという手もあります。
近所を散歩し、おやつや食事の時間に戻ってくれば、「帰ってきてよかった」という感覚も生まれます。また、「ここは自分を閉じ込めているわけではない」と安心感をもつようになり、それに伴って帰宅願望そのものも少なくなっていくでしょう。

(3) 昔の話をしてもらう

認知症であっても、昔のことはよく覚えている人が多いもの。とくに過去の誇らしい功績や、自分が一番輝いていたころの話は、鮮明に記憶しています。
「家に帰る前に、海外勤務していたときのお話を聞かせてください」などと誘い、向き合ってじっくりと相槌をうちましょう。昔話は高齢者を夢中にさせ、「帰りたい」という気持ちをどこかへやってしまいます。

(4) たくさん質問をしてみる

利用者の興味のある分野について、とにかく質問攻めにするのも効果的です。
「帰りたい」と言い出したら「その前に、胡蝶蘭の育て方でわからないことがあるんですが」などと水を向け、どんどん質問していきます。人は聞かれれば答えなくてはと気持ちを集中させるもの。話が盛り上がって帰宅のことを忘れたころに、「お茶でもいかがですか」とリビングの話の輪に入れるよう誘ってみましょう。

(5) とにかく褒める

ふと目を離したすきに、もう玄関から出ようとしている・・・そんなときは無理やり連れ戻したり、責めたりしてはいけません。
「どうしたんですか、そんな素敵な靴をはいて」と明るく呼び止めましょう。そして服でもヘアスタイルでも、とにかく褒めて気持ちをそらせます。そこから「もっとほかのお洋服も見せてほしい」「お帽子もかぶったほうが素敵ですよ」などと話を広げて部屋に戻るようにします。
褒められて嬉しくない人はいません。普段からも何かにつけて褒めるようにし、「ここは居心地がいい場所だ」と印象づけると、帰宅願望を抑えるのも楽になるでしょう。

(6) 「少しだけ待って」と頼んでみる

いろいろな方法を試しても「どうしても帰らないと」と強く要求されたら、「わかりました」といったん承知します。そして「私も近くに用事があるので、一緒に行きましょう。用意するので少しだけ待っていてください」と頼み、リビングに案内しましょう。仲の良い利用者と座らせ、テレビをつけたりお茶を出すなどして待ってもらううちに、話が弾み、帰宅することを忘れてしまうこともあります。

(7) 失禁していないか確認する

ズボンやパットを濡らし、恥ずかしさから帰宅したがる場合もありますので確認してみましょう。
もし失禁していた場合、相手は家に帰ろうとするくらい羞恥心を感じ、神経質になっていますので、他の人にわからないように耳元でそっと話しかけ、顔なじみのスタッフがケアをするように気を使ってください。

(8) トイレに誘ってみる

トイレに行きたいのに場所がわからず、自宅のトイレに行こうとする場合もよく見られます。
ただし「トイレに行きたい」と口にできずに、「帰りたい」とだけ訴える人もいますので、こちらからさりげなくトイレに誘ってみることです。
しばらくトイレに行っていなかったり、食事の後などに帰宅願望が現れたら、まず試してみましょう。

(9) 食事を用意していると言う

空腹のときに「食べたい」と言えず、自宅や外食ですませようとして帰りたがることもあります。
「いまお食事の用意をしていますよ」と声をかけてみましょう。待っていれば食べられるという安心と、自分のために用意してくれているという申し訳なさから、外に出るのを思いとどまる場合が多いです。
「お金はどうすればいいか」と聞かれることがよくありますが、「いりません」と言うとかえって不審に思われるので、「もう頂いています」と言って安心させてあげましょう。

(10) 不安を解消する

帰宅願望のきっかけは人それぞれ。漠然とした不安や不満から、「家の戸締りをしなくては」「仏壇にお参りしなくては」などの具体的なものまでさまざまです。
不安の原因がはっきりしているときは、「行かなくても大丈夫」な状況にしてあげると良いでしょう。たとえば家の戸締りなら「今日は息子さんが仕事帰りに行って閉めてくれるそうですよ」と話せば、その不安はひとまず解消します。家族など親しい人の名前を出して、その人に頼むことにすると、納得してくれることが多いので試してみてください。

認知症の高齢者は、状況を認識する力が衰えているだけで、感情は豊かに残っています。
ですので、誤った認識を無理やり正そうとしても、感情的になるだけで逆効果なのです。
帰宅願望を訴える利用者様に対しても、「相手が現状をどうとらえているのか」を理解し、受け入れたうえで、「もし自分がその立場ならどうしてほしいか」を考えれば、おのずから解決策が見えてくるでしょう。
「家に帰りたい」という気持ちは誰もが持っている本能。そこを否定することなく、利用者様の不安な心をうまくなだめ、落ち着かせてあげられると良いですね。

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