1.  航空分野のノウハウを活かしさまざまな施設の安全性と快適性を清掃・保守・接客でサポート

御社全体の業務内容と、導入部署の業務内容について教えてください

ANA スカイビルサービスは、1979 年の設立以来、航空分野で培われたノウハウを活かし、ビルメンテナンスや警備、ラウンジでの接遇など多岐にわたるサービスを提供しています。そのうちの1つである清掃事業部では、空港施設をはじめとする公共施設やオフィスビルなどの清掃サービスを担っており、昨年ベトナムより３名の技能実習生に来ていただきました。

2.  日本語教師派遣のきっかけは、お客様とコミュニケーションを円滑にとれるようにするため

清掃業務というと日本語を利用しないイメージがありますが、日本語レッスンを導入するにいたった背景 は何でしょうか？

技能実習生には現在は従業員が利用する施設の清掃を担当していただいておりますが、将来的には ANA便をご利用されるお客様の専用スペースであるラウンジでの清掃業務に従事させたいと考えているためです。ラウンジには様々なお客様がいらっしゃり、お客様の質問に正しく応対できる日本語力を身につけてほしいからです。例えば「トイレの場所はどこですか？」「喫煙所はどこですか?」といったお声がけに対して、笑顔でスムーズに対応できるようになってほしいと考えています。

3.  日本語教師を週に２回派遣。開始後３ヶ月で意外な効果を実感

日本語レッスンの様子を教えてください。

週に２回、講師の方に来ていただいて授業を行っています。教科書ベースに作文をすることもあれば、題材を決めて発表をしてもらうこともあります。JLPT 対策や文法等の専門的で正しい知識や、言い回しなどの表現の練習は素人では難しいと感じています。数多くの外国人への指導経験のあるプロの先生に来てもらって本当に良かったです。

日本語教師の派遣から３ヶ月が過ぎようとしていますが、効果はいかがでしょうか。

彼女達の日本語力の向上が近くにいてよく分かります。弊社では、技能実習生が打ち解けられるように毎月食事会を開いているのですが、以前は「分かりました」「はい」という言葉で終わっていたのが、今では「休日どこへ行けばよいですか」「あなたはどうですか？」というふうに自分から話しかけてくるようになりました。

３ヶ月で会話のキャッチボールがとれるのはすごいですね。職場にはどんな効果がありましたか？

日本語レッスンが始まってからは、日々のちょっとした問題も積極的に日本語で教えてくれるようになったのでとてもスムーズに対処できるようになりました。この調子で３年後に目標としている N3~N2 レベルに到達して、ゆくゆくはお客様への接客サービスをきちんとできる従業員になってほしいですね。

実業務以外の日々の生活に関わる部分でのサポートがとりやすくなったとは意外な効果ですね。

4.  日本語教師派遣は、中長期的な経営戦略。技能実習生と会社側でWin-Winの関係を築きあげる

技能実習生の本音の部分に着目し、日本語教育の制度を用意されたとのことですが、それはどのようなことでしょうか。

採用面接を通じて分かってきたことなのですが、彼らの目的は専門技術を習得して帰国後母国に貢献することに加え、日本語の習得と日本文化の理解を深め、将来的にはベトナムの日系企業で働きたいという強い意志があることでした。

また、採用市場が変化していくなかで、今後は弊社が技能実習生に選ばれる立場になると考 えています。これから来ていただく技能実習生には、弊社で働くと日系企業での就労経験に 加えて、日本語力の早期向上のためのサポート環境という付加価値があることを知ってい ただきたいです。より優秀な技能実習生に来てもらえたらお互いにとって良い事だと考えています。

ベトナムでは SNS が非常に発達しているとのことですので、中長期的な採用活動としても意識されて いるのですね。また、技能実習生が日本語を習得することで、組織活性にもつながるとのことですが、具体的に教えていただけますでしょうか。

清掃業務スタッフは清掃経験の豊富な方が従事されることが多いので、年齢構成としては２０代が少ない職場環境です。そこへ体力・スピードがある若い力、つまり技能実習生が入ることで職場への刺激になっています。また、清掃業種においては年齢的に若い社員の雇用が少なく、それに伴って若手を育成するマネージメントの機会も少なくなっている現状があります。この制度と共に、管理社員の成長にも繋げていきたいと考えています。

【まとめ】

技能実習生への日本語レッスンを導入するメリットは、実習生本人の日本語力向上やキャリア支援になるだけでなく、中長期的な採用力の強化や、社内の組織活性につなげられることが分かりました。

「これからは我々が選ばれる立場になる」という言葉が印象的だった今回のインタビュー。日本語レッスンの 導入の決め手は企業により様々ですが、現在の必要性はもちろん、今後の採用市場の変化を一つの観 点に含めてみるのも良いといえるでしょう。

お忙しいところありがとうございました！