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学校も教員も大きな意識改革が必要。
教育の質を担保するために、
部活指導のあり方が
変わる時代がくる。

森村学園

副校長 林様

森村学園

1.  教育の質を高めるために部活動指導員を導入

部活動指導員導入のきっかけはなんですか?

きっかけは、労基署から教職員の時間外労働を是正するように指導を受け、8時間労働の実現を求められたことですね。本校に限らないとは思いますが、学校が長時間に及ぶ教員のサービス残業によって成りたってきたことが明白になったわけです。しかし、業務の総量を変えずに残業代で賄おうとすれば、経営が立ちゆかなくなりますし、業務量を大幅に削減すれば、教育の品質が大幅に低下することになります。特に後者は、私立学校にとって、ゆるがせにできない問題です。そこに浮上してきたのが、部活動指導業務の見直しです。

実際どのような問題なのでしょうか?

これまで各教員は、部活動指導を終えてから翌日の授業準備に着手していましたが、働き方改革に踏み切れば、部活動指導が終了した時点で、終業時刻に達してしまうわけです。そこで無理に教員を退勤させれば、結局は自宅に残業を持ち込ませることになり、根本的な解決にはなりません。プライベートな時間・空間にまで業務が入りこんでくるとしたら、それは働き方改悪です。
要するに、中等教育段階での働き方改革は、教員の最重要業務である教科指導・生徒指導に十分な時間を確保すること、すなわち放課後から退勤時刻までの間にその業務が完遂できる状況を創り出すことを意味するのです。帰宅後に、それぞれが私的な時間をきちんと確保できてこそ、真の働き方改革にほかなりません。
そこで、本校ではすべての教員が部活動指導に関わる現状を改めない限り、教育の品質を保つことはできないという判断をしました。私学の場合、進学実績を維持・向上させることは必須事項ですので、5教科(国数英理社)の全教員を部活動の顧問から外す措置を取りました。その業務を部活動指導員の導入によって解決することにしたのです。なお、実技系の教科は、担当する部活動が教科指導の延長線上にあるので、顧問業務は継続してもらっています。

2.  「部活指導をやれない・・・」そんな教員の気持ちにも、
少しずつ変化が

「残業してもいいから部活指導したい」という先生はいたのではないでしょうか?

「部活動指導をしたい」という願望をもって教職に就いた者もいますので、理性では受け入れても、心情的になかなか納得してくれない教員もいました。しかし、背景に日本社会全体で「働き方改革をどのように進めていくか」という大義があること、8時間労働を遵守しながら私学としての教育品質を担保していく責務があること等々を繰り返し訴えました。就業時間の大幅な削減は明々白々でしたので、「日々の教材研究に必要な時間をどこで捻出するの?」「どうやって教育の質を担保するの?」という具体的な問いをもって、ひたすら教員の理性に訴えるしかありませんでしたね。

なるほど、それについては理解をせざるを得ないですね。

ただ、その不満もコロナ禍によって、教員を取り巻く環境が変わったために急速に影を潜めることになりました。登校禁止期間を乗り切るために、4月からの約3ヶ月、教員は通常授業に代わる動画コンテンツ作り等に追われることになり、教科指導だけでも多忙感を味わったからです。

社会的にも「教員の長時間労働問題」が問題視されていますね。

そうですね。加えて、文部科学省やスポーツ庁が後押しする形で、部活動指導員の採用についてかなり積極的な姿勢を打ち出しており、急速な時代の変化を目の当たりにした教員たちの気持ちは少しずつ整理され始めていると思います。今後、コロナ以前の状況に戻ったとき、教育界に不可逆的なパラダイム転換が起こっていたことが一層明確になるのではないかと思います。

3.  外部に委託する場合は、学校側の部活に対するイメージと
マッチした人を選んでいただけるかどうかが鍵

部活動指導員をの導入に際し、なにか不安はありましたか?

かつては「部活動指導員」の前身的な「外部コーチ」という存在が、部活動をサポートしてくださっていました。その当時は、「部活動指導員の採用が必ずしも良い事ずくめではない」という他校情報も耳にしていました。そのため、有事の際の責任の所在がどうなるのかなど、不安を口にする教員たちもいました。

特に運動部だと、普通に部活動を行っていても怪我・事故はつきものです。全国的にみて、これまでの学校管轄下の部活動でさえ社会をにぎわすような問題に発展するケースは各地で発生していました。その意味でも、部活動指導員制度は、細かい法整備を含め、さまざまな課題が残されています。その点は、文部科学省、スポーツ庁にしっかりリードしていただきたいと思います。

では、部活動指導員を導入した後の先生たち反応はいかがでしょうか?

もちろん、はじめはお互い不慣れな関係から生まれる、すれ違いなどはありましたが、大きな問題にはなりませんでした。指導に来ていただいている方は、熱心に指導していらっしゃいますよ。生徒からも不満は一切聞こえてこないです。

ご満足いただけているようで良かったです。弊社では学校それぞれにマッチした部活動指導員を選定しています。

学校側の部活動の位置づけ・要望とマッチした人を選んでいただけるというのが大きな鍵だと思います。大会実績にこだわりたいのか、部活動を通して人間的な成長を促したいのか、など、学校の部活動に対する位置づけにマッチした人を選んでいただくことが大切だと感じますね。

4.  「残業代を部活動指導員に充てる」という発想で予算を確保

部活動指導員導入において、予算面での苦労をされたと思いますが、どのような舵取りをしましたか?

予算は非常に大きな問題でした。通常、教員が行う平日の部活指導には就業時間内の業務ですから、人件費はかかりません。ただ、部活動後に授業準備のための残業をしなければならないとなれば、必然的に残業代が発生してしまいます。ですから、見込まれる残業代を部活動指導員の人件費に充てるという発想に立つしかないと思います。両者でぴったり相殺し合うとは限りませんが、部活指導員の雇用は、既存の業務の分業化である以上、この発想が妥当だと考えています。

学校がしっかりと残業代を支払っているという前提のもとに成り立つ話ですね

もちろん、そうなります。また、今後は部活動に参加する生徒に対し、受益者負担として部費の増額をお願いすることも視野に入れなければならないと思います。「外部コーチ」の時代は、その人件費を「月謝」に近い形でそれぞれの部が徴収し、賄っていました。そのような部費制度への切り替えも必要になるかもしれません。ただ、部によって徴収額が違うと、不公平感を生み出すので、学校の予算とのバランスを計算しながら、すべての部で人件費相当額を定額徴収するなどの対応すれば、人件費の原資を担保できると思います。『応分の負担』を保護者や生徒に求めていく時代になってゆくのでしょうね。

5.  生徒も保護者も学校も教員も大きな意識改革が必要になる

今後、学校と部活の関係について、御校だけでなく業界全体としてどのような流れになっていくとお考えですか?

あくまでも中長期的な見通しに立ちますが、先だってスポーツ庁が休日の部活動を、地域あるいは民間のスポーツ団体等に委託していくような分業的方針を打ち出しました。ただ、公立学校と違い、この制度を私立学校に定着させることは容易ではないと思います。相当な強制力の発動が必要になるでしょう。仮にそれを実現できたとしても、平日の部活指導は学校が担うことになるので、教員の学習指導等に割く時間が不足することは目に見えています。結果的に、やがては平日の部活も休日部活のように地域の第三者に委託する時代が来るのだろうと予測しています。

部活動の立ち位置が変わるということでしょうか?

そうです。つまり部活動自体が、学校直轄下でなく、学校+αの”α”の部分に主体が移るのではないかと思います。教員が8時間という労働時間を遵守していかなければならないのであれば、限られた労働時間の中で、部活動指導と教科指導の両方で結果を出すことは困難です。それを放置すれば、保護者や生徒から「部活動指導では満足しているが、授業がよろしくない」などといった厳しい追求を受ける可能性もあります。ですから、これからは”α”、すなわち地域やスポーツ関連団体の力を借りながら、部活動の在り方そのものが大きく変容する時代が来るのでしょう。

休日に先生方を休ませたくても、平日と休日の部活動の引き継ぎに問題が発生したり、単純に先生が部活に関わりたいと思ったりしますからね。

心情的にはやはり関わりたくなりますよね。かわいい生徒ですから。ただ、ある部の教員が休日部活に関わらなかった場合に「他の部の先生は来てくれるのに、なぜうちの先生は来てくれないの?」といったクレームが生じるでしょう。そうなれば、当人は行きたくないけれど行かざるを得なくなります。こういう空気があるうちは、過労で教員が倒れるような悲劇はなくならないでしょう。生徒も保護者も学校も教員も大きな意識改革が必要だと思います。

御校の革新的な取り組みとして、部活動の大会などで休日出勤をした際に、振替休日を取得できるような取り組みをされると聞きました。

部活動指導に携わる体育科教員に限定した今後の取り組みですが、本校は六日制なので、教員たちは日曜日とそれ以外の一日を休みとしています。その際、勤務する五日間すべてに授業を入れず、授業の無い出勤日を一日作るという計画です。そうすることで、大会などで日曜日に休日出勤した場合、授業のない出勤日を休日に振り替えて、週休二日の休日を確保することが可能になります。

おそらく多くの学校のこれからのヒントになると思います。

6.  生徒のために教員が自覚することが大切。
『気持ち』を『理性』で乗り越える。

部活動指導員の導入へ、一歩踏み出せない学校担当者へメッセージをお願いします。

部活動指導員導入に踏み出せないのは『経営者側の問題』と『教員の《自覚》の問題』だと思います。人件費をどのように捻出するかといった経営側の問題であれば、残業代と相殺するという考え方、受益者負担を加味した部費という発想で解消できるかもしれません。

『教員の《自覚》の問題』とは何でしょうか?

先でも触れたように、今まで1日10時間以上当たり前のように働いていた教員が、8時間労働となった時、仕事量の削減は避けられぬ以上、教育の質を保つことが困難になります。それを補うためには、残業相当分を家に持ち帰ったり、管理職の目を盗んでサービス残業をしたりしなければならなくなります。ただ、健全な人間の育成を目的とする学校が、法令を遵守できなければ、反社会集団に身を落とすことになるのではないでしょうか?

社会全体で働き方を変革しようとしているのに、学校だけが旧来の体質に縛られていては、教員になりたいという人はどんどん減少するでしょう。また、教員業務の中で優先順位をつければ、『教科指導』『生徒指導』がまず挙がるはずで、部活動指導が筆頭に来ることはありえないはずです。ましてや来年度から導入される新教育課程は、学びのあり方の大転換をめざすものです。対話型・課題解決型の授業構築には、これまで以上の準備時間が求められるはずです。限られた就業時間の中で部活動指導もこなしながら、十分な教科指導を実現することはできない、という「当たり前のこと」を私たち教員たちが自覚すべきなのだと思います。「部活動指導をしたい」「かわいい生徒のために部活動で一肌脱ぎたい」という『感情』を『理性』で乗り越えていくしかないと思います。私たちの本業は、「まず授業で勝負すること」ではないでしょうか。

【まとめ】

部活動指導員を導入するにあたって、どう予算を確保するか?教員の気持ちにどう配慮するか?など、たいへん貴重なお話をお伺いすることができました。教員が『教育の質』を保ちながら『実働8時間』を実現するためには、『教員が行う部活指導の時間を削減すること』、そして『教員が理性で納得すること』が必要だということが分かりました。

お忙しいところありがとうございました!

学校情報

学校名
森村学園
URL
https://www.morimura.ac.jp/jsh/
所在地
神奈川県横浜市緑区長津田町2695

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おかげさまで
上場いたしました

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