児童発達支援管理責任者(児発管)とは?なるには?仕事内容って?どんな資格・研修がいるの?そんな疑問を解決!
児童発達支援管理責任者(児発管)は、障害のある子どもを支援する施設において、現場やサービスを取り仕切るリーダー的な存在です。
近年、障害児支援施設も増えており、児童発達支援管理責任者のニーズも高まっています。
今回は、児童発達支援管理責任者の役割や仕事内容、なるために必要な資格・要件などについてご紹介します。
(この記事では2021年8月31日現在の内容をまとめています)
児童発達支援管理責任者とは?
児童発達支援管理責任者は、障害のある子どもや、発達に課題にある子どもを支援(療育)する専門職です。『児発管』と略して呼ばれることもあります。
児童発達支援管理責任者は、様々な障害児支援施設で働いている事が多く、障害のある子どもの発達具合や状況に応じて家庭や関係機関と連携を取りながら支援(療育)を行い、その支援(療育)について統括する存在です。
配置基準
児童発達支援管理責任者は、児童発達支援、放課後等デイサービスなどの『障害児通所支援施設』に必ず『常勤』で配置しなければならない人員です。施設の運営などを統括する『管理者』と兼務している場合もあります。
児童発達支援管理責任者のニーズ
近年、障害のある子や、発達に課題がある子の数が増加傾向にあり、それに合わせて障害児支援の事業所の拡充が急がれています。事業所を設置する上で、児童発達支援管理責任者は『配置が必須』となっているため児童発達支援管理責任者のニーズが高まっています。
仕事内容
児童発達支援管理責任者の業務内容は、幅広く、専門知識が問われるお仕事です。
大まかに『障害のある子どもの支援』ですが、子どもたちの心理面・発達面の状態・課題をしっかりと把握し、子ども・保護者に対して『きめ細かいサポート』を行います。
アセスメント
施設に通う子どもの障害の種類・課題は一人ひとり違います。
後述の『個別支援計画』の作成、及び支援(療育)の効果を最大化させるために、障害のある子ども・保護者との面談を通じて現状・情報分析、ニーズを把握します。
個別支援計画の作成・説明
『アセスメント』によって得た情報で原案を作成し、スタッフ意見などを元に、『どんな支援内容にするか』また、『長期・短期の到達目標を具体化』し、子ども・保護者に対して適切な『個別支援計画』を作成します。個別支援計画を作成したら、本人と家族にその内容を説明し、同意を得て個別支援計画を交付します。
『個別支援計画』は支援内容を計画的、組織的に行うための重要な計画で、作成にあたっては専門知識・経験が求められます。また、個別支援計画は子どもの通う学校の教育支援計画書と連携させて作成されることもあります。
【個別支援計画の具体的な内容】
・課題分析
・総合的な支援方針
・到達目標(理想の生活を送るための長期的な目標)
・短期目標
・具体的な目標・支援内容 など
モニタリング
個別支援計画に基づいた支援が『適切に行えているか』、実際に『効果が出ているか』など、支援計画の『効果確認』や『見直しの必要性』を定期的(通常は3ヶ月)に確認し、記録します。
必要に応じて個別支援計画を修正し、児童の様子や環境に変化があればその都度モニタリング、個別支援計画の修正を行います。
家族・保護者への相談援助業務
アセスメントや個別支援計画書の説明・交付などで家族・保護者との面談業務などはありますが、それ以外にも日々、保護者の『悩み』や『相談』の対応をし、子どもとの接し方や、具体的な対応方法などのアドバイスを行い、『家庭への支援』も行います。
スタッフ指導
児童発達支援管理責任者は、スタッフへ支援(療育)方法や内容についてアドバイスや指導を行います。また、現場スタッフと一緒に子どもたちの支援(療育)を行うこともあります。
その他事務作業や庶務等
その他、施設業務に必要となる教材の手配や、スタッフの採用活動、各種書類作成、関係機関との連携の取り仕切り、送迎ドライバーなどの様々な業務も行うこともあります。
児童発達支援管理責任者は、障害児支援の『大切な役割』を担っています。
お仕事の流れ(放課後等デイサービスを例に)
児童発達支援管理責任者の1日の仕事の流れをご紹介します。
【放課後等デイサービスの場合】
09:30 出勤
09:45 朝礼
10:00 事務作業・支援(療育)の準備
10:30 保護者との面談、個別支援計画の作成
11:30 関係機関との打ち合わせ、事務作業
12:00 昼休憩
13:00 送迎フォロー、事務作業
14:00 支援(療育)サポート、事務作業
17:30 送迎フォロー、保護者対応
18:00 終礼・会議・掃除等
18:30 退勤
児童発達支援管理責任者の就業場所
児童発達支援管理責任者の多くは障害児支援施設で働いています。
障害児通所支援
障害児通所支援は、障害のある子どもたちが身近な地域で支援を受けられることを目的にした通所施設で、発達や課題に併せた支援(療育)を行っています。
◯児童発達支援(児童発達支援センター・児童発達事業所)
◯医療型児童発達支援
◯放課後等デイサービス
◯保育所等訪問支援
障害児入所支援
障害の程度が重く一般家庭での療育が困難な子どもや、虐待などからの保護が必要な子どもを受け入れています。日常生活に必要な知識や技能を身に着け、自立を目指します。
◯知的障害児施設
◯第一種自閉症児施設
◯第二種自閉症児施設
◯盲児施設
◯ろうあ児施設
◯肢体不自由児施設
◯肢体不自由児療護施設
◯重症心身障害児施設
児童発達支援管理責任者になるには
児童発達支援管理責任者になるには、『実務経験』『研修の受講』という定められた要件を満たすことで資格を取得できます。
※障害福祉事業所の支援内容や、そのクオリティの低さが問題となり、2017年・2019年に要件の定義や研修体系が一部変更されており、また、今後も変更されていくものだと予想されます。
要件を満たすまでの流れ
①実務経験要件を満たす
↓
②基礎研修(計26時間)
↓
③OJT(2年以上)
↓
④実践研修(14.5時間)
↓
☆資格取得
上記の流れで要件を満たすことができ、『児童発達支援管理責任者』となることができます。
その後、5年毎に更新研修(6時間)を受講する必要があります。
具体的な実務経験要件の内容
では、具体的な実務経験要件の内容についてご紹介します。
※注意※
これから紹介する要件(実務経験要件、研修要件)は、各自治体の要件を大まかにまとめたものです。各自治体によって要件は変わることがありますので、申込みする際や、詳細を知りたい場合などは必ず自治体にお問い合わせください。
実務経験要件
実務経験要件は、『従事する施設』『業務内容』『保有資格』によって、内容が異なります。
①~④のパターンに分けてご紹介します。
【実務経験①】相談支援業務(5年以上)
『相談支援業務』とは、心身障害や環境上の理由で日常生活に支障がある人からの相談に応じ、助言・指導などの支援を行う業務のことです。
《実務要件》
要件を満たすためには、通算5年以上かつ900日以上の相談支援業務の従事期間が必要です。
高齢分野での実務経験も業務従事期間に含めることができますが、児童・障害者に対する支援業務(障害福祉分野)に従事した期間が3年以上必要です。
《相談支援業務の範囲》
(1)相談支援事業に従事する者
・地域生活支援事業
・障害児相談支援事業
・身体障害者相談支援事業
・知的障害者相談支援事業
(2)相談機関等において相談支援業務に従事する者
・児童相談所
・児童家庭支援センター
・身体障害者更生相談所
・精神障害者社会復帰施設
・知的障害者更生相談所
・福祉事務所
・発達障害者支援センター
(3)施設等において相談支援業務に従事する者
・障害児入所施設
・乳児院
・児童養護施設
・児童心理治療施設
・児童自立支援施設
・障害者支援施設
・老人福祉施設
・精神保健福祉センター
・救護施設
・更生施設
・介護老人保健施設
・介護医療院
・地域包括支援センター
(4)就労支援に関する相談支援業務に従事する者
・障害者職業センター
・障害者就業
・生活支援センター
(5)学校教育法で規定された学校(大学を除く)において相談支援業務に従事する者
・幼稚園
・小学校
・中学校
・義務教育学校
・高等学校
・中等教育学校
・特別支援学校
・高等専門学校
(6)医療機関において相談支援業務に従事する者
・病院
・診療所
【実務経験②】直接支援業務(8年以上)
直接支援業務は、心身障害によって日常生活に支障がある人に対して入浴・排泄・食事など介護や生活能力を向上するための支援、訓練などを行う直接的な支援をする業務です。
《実務要件》
要件を満たすためには8年以上かつ1440日以上の直接支援業務の従事期間が必要です。
高齢分野での実務経験も業務従事期間に含めることができますが、児童・障害者に対する支援業務(障害福祉分野)に従事した期間が3年以上必要です。
《直接支援業務の範囲》
(1)施設等において直接支援業務に従事する者
・障害児入所施設
・助産施設
・乳児院
・母子生活支援施設
・保育所
・幼保連携型認定こども園
・児童厚生施設
・児童家庭支援センター
・児童養護施設
・児童心理治療施設
・児童自立支援施設
・障害者支援施設
・老人福祉施設
・介護老人保健施設
・介護医療院
・病院又は診療所の療養病床関係病室
(2)事業所等において直接支援業務に従事する者
・老人居宅介護等事業
・障害児通所支援事業
・児童自立生活援助事業
・放課後児童健全育成事業
・子育て短期支援事業
・児童養育事業
・小規模住居型児童養育事業
・家庭的保育事業
・小規模保育事業
・居宅訪問型保育事業
・事業所内保育事業
・病児保育
・子育て援助活動支援事業
・障害福祉サービス事業
・老人居宅介護等事業
(3)医療機関等において直接支援業務に従事する者
・病院
・診療所
・薬局
・訪問看護事業所
(4)障害者雇用事業所において直接支援業務に従事する者
・特例子会社
・助成金受給事業所
(5) 学校教育法で規定された学校(大学を除く)において直接支援業務に従事する者
・幼稚園
・小学校
・中学校
・義務教育学校
・高等学校
・中等教育学校
・特別支援学校
・高等専門学校
【実務経験③】有資格者の経験年数(5年以上)
下記、特定の資格を有している場合は、『直接支援業務』(【実務経験②】を参照)に5年以上従事していれば要件を満たします。
《対象となる資格》
・社会福祉主事任用資格
・相談支援の業務に関する基礎的な研修を修了する等により、相談支援の業務を行うために必要な知識及び技術を習得したものと認められるもの
(介護職員初任者研修等の修了者)
・保育士(国家戦略特別区域限定保育士も含む)
・児童指導員任用資格者
・精神障障害者社会復帰指導員任用資格者
【実務経験④】国家資格保有者の経験年数(3年以上)
下記、特定の国家資格を有しており、その業務に5年以上従事し、かつ『相談支援』(実務経験①参照)、『直接支援業務』(実務経験②参照)に通算3年以上従事していれば、要件を満たします。
また、国家資格などによる業務期間中に、『相談支援業務』『直接支援業務』の期間が含まれていても問題ありません。
《対象となる国家資格》
・社会福祉士
・介護福祉士
・精神保健福祉士
・理学療法士
・作業療法士
・視能訓練士
・義肢装具士
・歯科衛生士
・言語聴覚士、
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
・柔道整復師
・保健師
・助産師
・看護師
・准看護師、
・栄養士(管理栄養士)
・医師
・歯科医師
・薬剤師
具体的な研修要件の内容
研修要件
一般的な流れとして、『実務経験要件』を満たした後に、基礎研修を受講します。
※『実務経験要件』を満たす2年前から、基礎研修を受講は可能です。
【基礎研修】
基礎研修は『相談支援従事者初任者研修』『サービス管理責任者研修』の2つ(計26時間)を受講しなければなりません。
◎『相談支援従事者初任者研修」の一部(計11時間)
地域の障害者などが自身の意向に基づく地域生活を実現するために必要な、福祉支援、医療、就労、教育など、様々なサービスの総合的かつ適切な利用支援の知識・技術を習得することを目的とした研修です。
・障害者の地域支援と相談支援従事者(サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者)の役割に関する講義(5時間)
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の概要並びにサービス提供のプロセスに関する講義(3時間)
・相談支援におけるケアマネジメント手法に関する講義(3時間)
◎サービス管理責任者等研修(計15時間)
障害者総合支援法及び児童福祉法の適切で円滑な運営のため、サービスの質の確保に必要な知識と技能を有するサービス管理責任者および児童発達支援管理責任者の養成を図ることを目的とした研修です。
・サービス管理責任者、児童発達管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義(7.5時間)
・サービス提供プロセスの管理に関する演習(7.5時間)
【OJT】
計26時間の【基礎研修】を修了した日の以後、相談支援業務、直接支援業務に2年に従事(OJT)する必要があります。
従事する施設で、すでに児童発達支援管理責任者が1名配置されている場合は、基礎研修修了者を2人目以降の児童発達支援管理責任者として配置が可能となり、また、基礎研修修了者は個別支援計画の原案作成が可能となります。
※OJT(On the Job Training):実践を通じて業務知識身につけることです。
【実践研修 】
基礎研修を修了し、OJT期間を修了すれば、『サービス管理責任者実践研修』を受けることができ、研修を修了することで、『児童発達支援管理責任者』の資格を取得し、児童発達支援管理責任者として配置されることができるようになります。
◎サービス管理責任者実践研修(13.5時間)
個別支援計画作成・修正について熟達し、関係機関との調整や支援会議の運営、サービス提供に対する職員に技術的な指導・助言、プロセス管理業務おこなえるレベルに到達することを目的としています。
・障害福祉等の制度に関する講義(1時間)
・サービス提供に関する講義及び演習(6.5時間)
・人材育成の手法に関する講義及び演習(2.5時間)
・多職種及び地域連携に関する講義及び演習(3.5時間)
資格取得後の研修について
5年毎の更新研修
児童発達支援管理責任者の『資格を取得後』も更新研修が必要です。
更新頻度は5年毎です。
◎サービス管理責任者等更新研修(13時間)
最新の動向や今後の支援のありかた、自らが取り組むべき課題などを明確にするなど、質の高い福祉サービスの提供を目的としています。
・障害福祉の動向に関する講義(1時間)
・サービス提供の自己検証に関する演習(5時間)
・サービスの質の向上と人材の育成スーパービジョンに関する講義及び演習(7時間)
(2023年度までの更新研修では『サービスの質の向上と人材育成のためのスーパービジョンに関する講義及び演習』が省略されることがあります)
※【注意】更新研修は旧研修制度(平成30年度以前)で児童発達支援管理責任者の資格を取得した方も対象で、現在、旧研修制度で児童発達支援管理責任者としての資格を持っている方は2023年度までの間に更新研修を受講しなければ『資格を失効』してしまいます。
研修の申込み方法
研修の申込方法は都道府県ごとに異なります。
研修は「都道府県が行っている場合」「自治体から指定を受けた事業者が行っている場合」があり、研修を実施する頻度も年に1,2回と多くありません。
定期的に都道府県のホームページなどから研修の日程・場所・申込方法などを確認しましょう。
サービス管理責任者(サビ管)との違い
以前の障害福祉事業では児童・成人も区別がなく、サービス管理責任者(通称:サビ管)が障害者(障害児)の支援計画を作成していました。
ですが、2012年の法改正に伴い、より充実した福祉を提供するため『児童分野の専門職』として、『児童発達支援管理責任者』が誕生しました。
現在では、支援対象を大人としているのが『サービス管理責任者』、18歳以下(場合により20歳)の子どもを対象とするのが『児童発達支援管理責任者』という区別をされています。
また、以前は『児童発達支援管理責任者』と『サービス管理責任者』の資格取得までの研修内容は異なりましたが、分野を超えた連携を図るための共通基盤を構築する等の観点から、研修のカリキュラムを統一されています。
そのため児童発達支援管理責任者はサービス管理責任者として活躍することもできます。
平均年収
平成29年(2017年)の厚生労働省の調査によると、児童発達支援管理責任者の平均年収は下記の通りになっています。
・児童発達支援:約399万
・医療型児童発達支援:約588万
・放課後等デイサービス:約330万
・保育所等訪問施設:約466万
・福祉型障害児入所施設:約566万
・医療型障害児入所施設:約598万
あくまでも平均年収ですので、地域や事業所の規模、勤続年数で変動し、別途、住宅手当や通勤交通費、資格手当などを支給する場合もあります。
また、国がより良い福祉を実現するために賃金増加のため「処遇改善加算」「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定」など、取り組みを進めており、賃金の改善も進められています。
児童発達支援管理責任者のやりがい
児童発達支援管理責任者は、専門知識・経験を活かし、子ども・家族、そして働くスタッフのサポートも行う、頼れる存在として『幅広い業務』に携わります。
幅広い業務のため、『対応力』や『スピード力』も求められる場合もありますし、また、なかなか計画通りに支援が進まないことで、もどかしい思いをすることもあります。
ですが、関わる子どもが少しずつ課題を克服したり、できることが増えたりと『成長する姿』を間近で見ることは大きな喜びに繋がります。また、保護者の方の相談に乗ることや、寄り添うことも多いため、家族から感謝されることも多く、児童福祉・社会貢献における『大切な仕事』であることを実感し、やりがいに感じるでしょう。
児童発達支援管理責任者の仕事を探すには
児童発達支援管理責任者のお仕事は求人サイトから探す事ができます。
特に保育士や介護・福祉系の専門サイトがより多く求人が掲載される傾向にあります。
また、求人サイトを利用してお仕事を探すのも良いですし、人材紹介サービス会社に登録して、仕事探しの条件にマッチしたお仕事を紹介してもらう方法もおすすめですよ。
児童発達支援管理責任者についてご紹介しました。
児童発達支援管理責任者は、障害児支援施設でリーダーの役割を担っており、大変な仕事ですが、社会貢献度の高いやりがいのある職業だと言えます。
障害のある子どもや、発達に課題のある子どもの増加に伴って、児童発達支援管理責任者のニーズはますます高くなることが予想されます。
児童発達支援管理責任者に興味がある方は、要件を満たしているかどうかなど、一度確認してみてはいかがでしょうか?
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